NHKスペシャルをみた。

SARSは中国広東省が一番の流行地だったけど、香港とベトナムでもごく初期から感染者が現れた。

中国は、政府の対応が遅れて観光や経済にかなりの打撃を受けていたけれど。ベトナムでは早期から隔離と接触者の徹底的な洗い出しを行ったおかげで、世界で一番最初にSARSを制圧した国となった。

そのベトナムで、最初のSARS患者が現れた病院を訪れ、周囲の医療スタッフが次々に高熱を出して倒れ、頭痛と呼吸困難で苦しむなかで、一人一人の患者の声に耳を傾け、詳細な病歴を取った医師。それがウルバニ医師。

彼は国境なき医師団に所属したこともある人で、その経験を生かそうと、ベトナムで感染症対策に勤めていた。

ベトナム人の医療スタッフでさえ、病院から逃げ出してしまう。そんな病院にとどまり続け、患者のそばにい続け、手を握り、肩を抱き、励まし続けた。

WHOがグローバル・アラートというのを出して、世界中に警告を発表したときに、SARSをほかの疾患と鑑別するポイントを発表できたのも、このウルバニ医師が詳細な病歴をとり続けたからだという。

ベトナムを世界を大混乱から救った医師だ。

彼が、あるインタビューに答えて言っていた。
「誰もが等しく医療をうけれられる、そんな環境を作りたい。
そのために医師として自分に言い聞かせていることが二つある。
どんな障害があっても、けっしてあきらめないこと。
常に患者のそばにいつづけること。
この二つだ。」

自分の信念を曲げず、志を貫き通したこの医師は、初めてのSARS患者と出会ってから30日もたたないうちに、自らもSARSに感染し、タイの病院で亡くなった。

彼のような人が、実際にいるという事実は、自らもがんばらねばという大きな励みになる。
落ち込んだとき、へこたれそうになったときに、彼の名前と二つの誓いを思い出そう。